2012年5月15日火曜日

雇用の悪化に歯止めがかからなければ個人消費も伸びない

米労働省が4日発表した8月の雇用統計は、失業率が9・7%と0・3ポイント上昇し、26年2カ月ぶりの水準まで悪化するなど雇用情勢の厳しさを改めて浮き彫りにした。景気動向を敏感に反映するといわれる非農業部門の就業者数は減少幅を縮小するなど明るい兆しも見られるが、失業率10%の大台突破が目前に迫っており、米景気の先行きへの懸念は再び高まりそうだ。

就業者数の内訳を見ると、個人消費の低迷を受けてサービス部門全体で計8万人減と落ち込んだほか、自動車大手の経営破綻(はたん)の影響などで製造業が6万3000人減と不振だった。住宅市場の底打ち観測にもかかわらず、建設部門も6万5000人減と低迷した。

雇用の悪化に歯止めがかからなければ個人消費も伸びず、景気の本格回復は難しい。実際、米小売売上高は7月に0・1%減と3カ月ぶりに減少した。米国は年間1%超もの人口増があり、小売売上高の減少は数字以上の消費落ち込みを示している。

8月には米連邦準備制度理事会(FRB)が「景気見通しの下向きリスクは大きく後退した」と表明した。しかし、「雇用情勢の改善が明確にならない限り、景気の本格回復は期待できない」(米エコノミスト)との指摘もあり、米景気の先行きには依然として不安が残されたままだ。