2014年7月8日火曜日

スーパーキャッシュ共同実験

電子カードが現金をなんら裏付けに持っていなければ、貨幣としての機能を果たせるはずもない。それは単なる電子信号ないし電子情報といったものに過ぎなくなってしまう。言い換えれば、電子マネーというのは既存の貨幣(頂金)すなわち価値を前提として、それを電子情報としてICカードまたはインターネット上に取り込むことによって初めて生み出されるものである。

エレクトロニクス技術やコンピュータネットワークがいかに進歩発達したといっても、その上で移転される「価値」そのものを、魔法のように無から有を生み出すが如く、創造することは所詮できない相談である。しかし、銀行を介在させずに取引の当事者問で直接資金を移動できるうえに、ネットワークを通じて海外との取引・決済も可能だから、マネーサプライや課税など国の金融・財政政策等に与える影響は大きく、国を単位とした通貨体制を揺るがすという問題が生じている。現実に電子マネーに代表される決済の電子化というのは、どのような形で進められているのであろうか。

東京・渋谷で一九九八年七月から実験が開始されたのが「渋谷スマートカード」だ。ここではビザーインターナショナルの「ビザキャッシュ」という電子マネーカードで買い物、かできる。カードに搭載されたICチップに、あらかじめお金の価値データを入力しておき、買物の際に金額分をそこから引き落とすことによって支払いをすませる仕組みで、いわば汎用型のプリペイドカードである。

これには「使い切り型」と「再補充型」の二つのタイプがある。使い切り型はあらかじめ決められた金額の貨幣価値が充填されたもので、現状のプリペイドカードと同様に、使い切ってしまうとそのカードの価値はなくなる。再補充型の方は、あらかじめ貨幣価値は入っていないため、専用の端末やATMで充填する。充填しか価値を使い切ってしまっても、繰り返し補充して使うことができる。

その名も「スーパーキャッシュ共同実験」と銘打って一九九九年四月から東京・新宿で始まったのがNTTの開発した電子マネーの実験だ。専用端末を使って銀行の口座からカード内に預金を移し、買物をした分だけ店の端末に支払う。新宿駅周辺の参加店舗約一千店には専用の端末が置かれている。パソコンに端末を接続してインターネットを通じてやりとりすることもできる。この実験には都銀、地銀、第二地銀、長信銀、信託合わせて二十四行が参加しており、電子マネーは各銀行がそれぞれ発行する形になっているが、各行が発行した電子マネーを互いに流通使用することもできる仕組みである。