2014年6月23日月曜日

一般製造業の場合の定量分析

格付け機関は、被格付け会社から提供される情報の他に、マスコミ、調査機関、金融機関などさまざまな分野から起債者に関連する情報を常に入手している。外部から入手する情報に関しては信憑性が問題になるので、起債者とコンタクトをとったうえで、その外部情報を格付けに反映させるかどうかを決めるのが普通である。特に、債券発行後、何年かして収支の実績が当初の収支見込みと乖離してきた場合には、起債者は悪い情報を出したがらないので取引金融機関などの外部情報が重要になることがある。なお、被格付け会社は格付けを取得するときの契約によって、債券発行後も格付け機関に対して、決算書類、資金繰りの内訳などあらかじめ定められた情報を定期的に報告する義務がある。

起債者の依頼なしに行う格付けに関しては、それぞれの分野(業種、地域など)において蓄積された専門知識を有するアナリストがヽ有価証券報告書など公表された外部情報をもとに分析を行う。被格付け会社からの内部情報は入手できないが、もともと米国の格付け機関は内部情報よりも公表された情報の方に重きを置いている。というのは、公表情報は法律や規則などによって確定情報として取り扱われるが、末公表情報は起債者の都合によって変更される可能性もあるので、格付け機関としても投資家に対して責任を負えない場合があるためである。

格付け機関は起債者に関する情報のすべてを持っていると考えるのは間違いである。被格付け会社は、格付けの取得に関して有利になると思われる情報の提供にはインセンティブが働くが、不利になると思われる事柄に関しては格付け機関から求められない限り進んで提供することはないであろう。したがって、情報については監督当局、税務当局、公認会計士、大株主などの方が多くの情報を持っている場合が多い。

また、外国政府債に関するソブリン情報についても、外務省や援助関係の政府機関の方が質・量ともに格付け機関よりも勝っていると考えられる。したがって、格付け機関の場合は、仮に情報が少なくても、その情報を使って債務の償還能力を判定するという専門能力を保有していることが重要になる。公開情報だけでも格付けができるのは、情報を分析する専門能力を保有しているためであって、情報の量の問題ではない。

起債予定者から格付け機関に作成資料が提出されると、起債予定者の本社で一日か二日をかけて経営者とのミーティングが行われる。ミーティングの内容は、提出資料についての議論と償還スケジュール、経営方針などについてである。その後、担当者が分析を行うが、最終的な結論を出すまでにミーティング後一週間から五週間を要する。分析の中心は定量的な収支見通しの判断と、見通しがどの程度の確率で実現するかの定性的判断である。