2012年7月4日水曜日

官房長官は内閣のスポークスマンの役割

16日にも発足する「鳩山新政権」は、党務を「小沢幹事長」が、内閣を鳩山代表側近の平野博文役員室担当が官房長官となって仕切るという「両輪」が見えてきた。

鳩山氏は4日、党本部で記者団の質問に、社民、国民新両党との連立協議が進行中であることを理由に平野氏の官房長官起用を認めなかったが、平野氏の能力は高く評価した。

「鳩山氏に何があっても支え続ける」と語る平野氏は、松下電器産業労組出身。旧社会党の中村正男元衆院議員の秘書を務めた後、1996年の衆院選で無所属で初当選した。電機連合の支援を受けている。

2006年の前原誠司代表(現副代表)当時、「鳩山幹事長―平野総務局長」のコンビで偽メール問題への対応に奔走した。小沢代表(現代表代行)の下では「鳩山幹事長―平野幹事長代理」となり、二人三脚で党内を切り盛りした。党内では「平野氏は官房長官になる」との見方は少なくなかった。

その一方、小沢氏周辺からは「平野氏は出しゃばりすぎだ」との声も漏れていた。「平野氏が鳩山氏を囲い込んでいて、鳩山氏と小沢氏の連携がうまくいかない」という不満で、これが「平野官房長官」の実現を妨げているとも言われた。

しかし、鳩山氏の幹事長就任要請を小沢氏が快諾、閣僚人事を鳩山氏に任せるとの考えを伝えたことで、鳩山氏側は「平野氏の官房長官起用の障害はなくなった」と判断したようだ。実際、小沢氏に近い党幹部は4日、鳩山氏から電話で平野氏の官房長官起用を伝えられると、「それでいいですよ」と太鼓判を押した。

衆院選の圧勝で勢いに乗る鳩山氏だが、足元は万全とは言い難い。公設秘書による架空の個人献金の虚偽記載問題は、報道各社の世論調査などで「説明責任を果たしていない」などと批判されている。自民党は国会審議で追及する構えを見せている。

平野氏の起用には「今後のピンチに備え、世間的には無名でも、信頼できる人物を使った」との見方がある。また、官房長官は官房機密費を扱う立場であることから、「党のカネは小沢氏に委ね、鳩山氏側が自由に使える資金を残すすみ分けをした」との受け止めもある。

ただ、民主党は「政府・与党の一体化」を掲げており、党と政府のすみ分けが進み過ぎれば目標と逆行する。小沢氏側と平野氏側の連携は、新政権の重要な課題となりそうだ。

官房長官は内閣のスポークスマンの役割のほか、国会対策や閣内の政策調整なども行う。首相の側近だが実力は未知数という「中量級官房長官」(ベテラン)が、どれだけ重責をこなせるのか。鳩山氏は4日、記者団に、首相の下に設ける国家戦略局(室)の担当閣僚に政策調整を任せ、「官房長官には国会との間のスムーズな運営を心がけるのが大きな役割」と語った。