2012年6月19日火曜日

性別変更を認める法改正の実現

司法統計によると、04年7月の法施行から08年までに性別変更が認められたのは1263人。GIDの診察経験が豊富な「はりまメンタルクリニック」(東京都)の針間克己院長は、性別変更のための診断書を書いた268人(05~09年)のうち国内で手術を受けた人が65人(約24%)にとどまったと報告。

中でも08、09両年はそれぞれ2割を切っていた。国内では手術を実施できる病院が数カ所に限られ手続きに手間がかかることや、保険適用外のため手術費が高額になることなどが理由だという。

一方、タイで手術を受けた椿姫さんは「国内は症例数が少なく、医師にさえ珍しそうな目で見られるのが嫌だった。タイの社会ではGIDが自然に受け入れられているので、精神的な負担の軽さも考慮した」と選択の理由を語った。

手術を受けることを性別変更の条件にしていることにも意見が相次いだ。手術をしていない野宮さんは「体をどうしたいのかという点でも、当事者の有りようはさまざま」。針間院長は「例えば女性の場合、ホルモン療法による男性化だけで支障なく暮らせていた人たちが、戸籍を男性に変えるため、さらに子宮や卵巣まで摘出するケースが増えた。医師の倫理として疑問を感じる」と指摘した。

また、野宮さんからは「戸籍の変更が無理だとしても、住民票やパスポートといった個人の身分の識別に使う書類は、生活上の実態に即した性別で発行されるべきではないか」との問題提起もあった。

弁護士であるGID学会の大島俊之理事長は「現に米国や豪州ではそのような形でパスポートが発行されている。治療開始から性別変更までは何年もかかるので、移行期間にある人を救うためにも必要な措置だ」と賛同したうえで「高額な性別適合手術を保険適用にすることと、未成年の子がいる人でも性別変更を認める法改正の実現に向けて、更に運動を進めたい」と力を込めた。