2014年5月2日金曜日

ユーロ市場の膨張

九〇年代に入ると同時に、こうした三要因がそろって不成立となってきた。BIS規制の導入や、S&L(貯蓄貸付組合)問題に由来する米国金融システムの変調は、国際的流動性創出メカニズムの機能不全化をもたらした。また、G-7体制の限界が鮮明化してくると、米国は国際的政策協調を模索しえなくなってきた。

この状況下で、八九年末からの東欧革命やソ連における自由化・民主化の動きは、東西ドイツの統一にまで進んだ。こうした国際政治情勢の急変は国際資本移動に絶大な影響を及ぼした。このように、九〇年代に入るやいなや、バブルをもたらした条件がことごとく逆方向に作用しだしたのである。そして、ついにバブルにまで膨張した資産インフレが破綻せざるをえない条件がそろってきたのである。

経常収支に不均衡が発生すると、その調節のために国際資本移動、が必要となる。経常収支不均衡は国内における資金の過不足状況を示しており、それを海外との資本取引で調整するわけである。通常は、経常収支が黒字であれば国内では資金余剰が発生している。そして、この余剰資金は海外に流出することになり、資本収支は赤字となる。逆に経常収支の赤字は国内での資金不足を意味する。そして、この不足分は海外からの資本流入で賄われる。

経常収支の黒字と赤字、が、特定の国や地域をとった場合、景気サイクルの変化に合わせて交代的に発生するとすれば、あるサイクルを通じた経常収支の累積は均衡に近いと想定される。この状況下では、各国間の経常収支不均衡を埋め合わせるための国際資本移動は限定的なものとなる。だが現実的には、経常収支不均衡の発生は赤字か黒字かどちらかの一方向に偏在し、継続的に発生してきた。

事実、七〇年代以降は、経常収支赤字国は赤字を、また経常収支黒字国は黒字を持続化することが常態化していた。このとき、各国間の経常収支不均衡をファイナンスする上で、国際金融市場が急速な発展をみることになる。この点でユーロの銀行市場(以下ユーロ市場)が経常収支不均衡を調整する場として急拡大を見せているのは当然である。