2016年3月12日土曜日

閑古鳥の鳴く港

ムダ遣いやバラマキ予算は、なにも建設省や農水省の御家芸ではない。港湾、空港など公共事業の一割を実施する運輸省も、第三の実施官庁として例外ではない。同省所管の港湾法による港が、一九六一年以来、全国各地に千百二も完成している(これには農水省が管轄する三千に及ぶ漁港はふくまれていない)。

相次ぐ計画の実行の結果どうなったか。一九九六年九月、総務庁行政監察局は「港湾に関する行政監査結果報告書」を発表し、ムダな港湾づくりの例を指摘した。同報告は全国で主要な港のうち三十三ヵ所を調査しただけだが、報告書には驚くべき事例が満ちていた。同局の慣例で、固有名詞は避けているが、記述内容から具体的に推定できる港湾もある。

企業誘致に失敗した青森県のむつ小川原開発では、はじめ予定した製造業関連の工場の立地がほとんどなトのに、むつ小川原港(と推定される港)には公共の岸壁バースが十二もできており、取扱量の平均は二〇〇〇年の目標の一〇パーセントに満たず、現状では目標の達成は無理だとしている。

別の港では、すでにA地区に八バースができていたのに、近年になって整備が進められたB地区に二十四ものバースが完成した。しかし、二〇〇〇年の目標四百二十五万四千トンに対して実績は九十一万トンにすぎない。しかも、同地区には二〇〇〇年までに、五パースの建設が計画されている。

さらに別の港では、一九九三年四月に使用が開始された鉄鋼貨物用の百メートルの岸壁に接岸するのは、年間十隻前後だという。ほかにも、年間二三隻の接岸しかない、パースがある港があることがわかる。これも氷山の一角だ。各地に港をつくったのはいいが、その後、産業構造の変化や空洞化で期待の工場が後背地に来なかったり、港が小さすぎ、大型化するコンテナ船が入港できないなど、低利用の港が少なくない。いったん計画をたてると、情勢が変わってもそれに固執するので、ムダがますます増える構造になっている。