2015年8月18日火曜日

反共的なイデオロギーをもつエリート

蒋介石と一緒に台湾に移り住んだのは、蒋に強い忠誠心を抱く、軍人を中心とした国民党エリートであった。反共的なイデオロギーをもつこのエリートは、台湾において党はもちろんのこと、軍部や政府を支配する圧倒的な権力を、その統治の初期的時点からもっていたのである。大陸中国からの脅威は恒常的であり、緊迫したものであった。この脅威は、国民党エリートの団結をいちだんと固いものにし、また国民党による原住「内省人」の統制を正当化する根拠ともなった。国民党による台湾支配の中枢にあったのは、軍部と特務機関であった。台湾住民の、外来のこの国民党に対する反感は複雑なものであったとはいえ、その反感を具体的な行動であらわすには、国民党の権力はあまりに強く、台湾住民の力はあまりに弱かった。

台湾を支配した国民党エリートは、かつて大陸時代のそれとは異なった行動様式をとることを余儀なくされた。大陸における国民党からの民心離反が、共産党との内戦に敗れた原因であることを、国民党エリートはようやく自覚するようになっていた。みずからの生存の頼みの綱であったアメリカは、大陸での国民党の敗北の原因がその腐敗と政治的無能にあったとして、国民党の台湾移転ののちも、なお国民党支持に少なからぬ懸念をみせていたのである。国民党にとってはまことにさいわいなことに、朝鮮戦争の勃発が反共勢力である国民党への支持をアメリカに余儀なくさせた。